「SIerでの働き方に疑問を感じている」「Web系企業で最新技術に触れたい」「年収を上げたい」――そんな想いを抱くSIerエンジニアが増えています。2025年現在、SIerからWeb系への転職は活発化しており、適切な戦略があれば成功率を大幅に向上させることができます。

本記事では、SIerとWeb系の違いから転職成功のための具体的戦略まで、すべてを網羅して解説します。

SIerとWeb系の根本的な違い

ビジネスモデルの違い

SIer

• 受託開発: クライアントの要求に基づくシステム開発
• 一次請け〜多重下請け: ピラミッド構造での開発体制
• 長期プロジェクト: 数年にわたる大規模開発
• 保守運用: 開発後の長期サポート・改修

Web系

• 自社サービス: 自社プロダクトの企画・開発・運用
• アジャイル開発: 短期スプリントでの機能開発
• スピード重視: 市場投入までの速度を重視
• グロース志向: ユーザー数・売上の継続的成長

技術・開発文化の違い

SIer

• 安定性重視: 枯れた技術、実績のあるソリューション
• ドキュメント重視: 詳細な設計書、手順書の作成
• ウォーターフォール: 段階的な開発プロセス
• 品質管理: 厳格なテスト、品質保証プロセス

Web系

• 最新技術: React、Vue、AWS等のモダンな技術スタック
• コード重視: 動くコードによる迅速な検証
• アジャイル: 継続的なリリース、改善サイクル
• ユーザー体験: UI/UX、パフォーマンスを重視

働き方・文化の違い

項目	SIer	Web系
勤務時間	定時、残業文化が根強い	フレックス、リモートワーク可
服装	スーツ、フォーマル	カジュアル、自由度高
評価	年功序列、安定性重視	成果主義、実力重視
キャリア	専門性より管理職志向	技術専門性重視
意思決定	稟議、会議重視	スピード、実験重視

SIerからWeb系転職のメリット・デメリット

メリット

技術的成長機会

• 最新技術: React、Vue、Docker、AWS等の習得
• 開発速度: 高速な開発サイクルでの技術力向上
• 自由度: 技術選定への参画機会
• OSS活動: オープンソースへの貢献機会

キャリア・年収

• 年収アップ: SIerより20-40%高い年収水準
• キャリアパス: 技術専門家としての明確な道筋
• 転職市場価値: モダン技術経験による市場価値向上
• ストックオプション: 成長企業での株式報酬機会

働き方

• 柔軟性: リモートワーク、フレックス制度
• スピード感: 意思決定の速さ、変化への対応力
• 創造性: プロダクト企画・改善への参画
• チーム文化: フラットな組織、オープンなコミュニケーション

デメリット・リスク

不安定性

• 雇用リスク: 業績悪化時のリストラリスク
• 事業リスク: プロダクトの失敗、ピボットリスク
• 変化の激しさ: 技術・事業の急速な変化対応

求められるレベル

• 自立性: 指示待ちではなく自発的行動
• 技術力: 即戦力としての技術スキル
• ビジネス理解: プロダクト・ユーザーへの理解
• 継続学習: 常に新しい技術をキャッチアップ

労働環境

• 労働時間: スタートアップでは長時間労働の可能性
• プレッシャー: 成果主義による心理的負担
• 福利厚生: SIer大手と比べて薄い可能性

SIerエンジニアの転職市場価値

現在のスキルの棚卸し

高く評価されるSIer経験

• 大規模システム開発: エンタープライズレベルの開発経験
• プロジェクト管理: 要件定義、進捗管理、品質管理
• 顧客対応: ステークホルダーとの調整・コミュニケーション
• インフラ: オンプレミス〜クラウドの幅広いインフラ知識

Web系で通用するスキル

• Java/C#: バックエンド開発の基礎として活用可能
• SQL: データベース設計・最適化スキル
• Linux: サーバー構築・運用経験
• ネットワーク: 基盤となるネットワーク知識

年収相場の比較

SIer（経験5年）

• 大手SIer: 600万円〜800万円
• 中堅SIer: 500万円〜700万円
• SES: 400万円〜600万円

Web系転職後（同経験年数）

• メガベンチャー: 700万円〜1,200万円
• 成長ベンチャー: 600万円〜1,000万円
• スタートアップ: 500万円〜900万円（+ストックオプション）

転職成功率を高める要因

有利な条件

• 20代〜30代前半: 伸び代・適応力への期待
• 技術志向: プログラミングへの関心・学習意欲
• 自走力: 指示待ちではない主体的な姿勢
• 英語力: 海外サービス・技術情報へのアクセス

不利になりやすい条件

• 技術軽視: 管理業務のみ、技術から遠ざかっている
• 変化への抵抗: 新しい技術・手法への拒否反応
• 指示待ち: 受け身な姿勢、自発性の欠如
• 40代以上: 適応力・学習速度への懸念

転職成功のための具体的戦略

1. スキルギャップの把握と習得戦略

必須習得スキル（優先度：高）

フロントエンド

• JavaScript: ES6+、非同期処理、DOM操作
• React: Hooks、状態管理、コンポーネント設計
• CSS: Flexbox、Grid、レスポンシブデザイン
• Git: バージョン管理、チーム開発

バックエンド

• Node.js: Express、API開発
• クラウド: AWS基礎（EC2、S3、RDS）
• データベース: NoSQL（MongoDB）、SQL最適化
• API設計: REST、GraphQL

開発環境・ツール

• Docker: コンテナ化、開発環境統一
• CI/CD: GitHub Actions、自動デプロイ
• テスト: ユニットテスト、統合テスト
• 監視: ログ管理、パフォーマンス監視

推奨習得スキル（優先度：中）

• TypeScript: 型安全な開発
• Next.js/Nuxt.js: SSR/SSGフレームワーク
• Kubernetes: コンテナオーケストレーション
• マイクロサービス: 分散アーキテクチャ

2. 学習ロードマップ（6ヶ月プラン）

Month 1-2: 基礎固め

1. JavaScript基礎

   • Progate、ドットインストールで基本文法
   • MDN Web Docsで詳細学習
   • 簡単なアプリケーション作成

2. Git/GitHub

   • Git基本操作
   • GitHub flow理解
   • オープンソースプロジェクトへの小さな貢献

Month 3-4: フレームワーク習得

1. React.js学習

   • 公式チュートリアル完走
   • Todo アプリ、天気アプリ作成
   • Hooks、Context APIの理解

2. バックエンド基礎

   • Node.js + Express
   • REST API開発
   • データベース連携

Month 5-6: 実践プロジェクト

1. ポートフォリオ作成

   • フルスタックアプリケーション開発
   • デプロイ（Vercel、Heroku）
   • コードの品質向上（ESLint、Prettier）

2. 技術記事執筆

   • Qiita、Zennでの技術記事投稿
   • 学習過程での気づきをアウトプット

3. ポートフォリオ戦略

必須要素

• フルスタックアプリ: フロント〜バックエンド〜DB
• レスポンシブデザイン: モバイル対応
• 認証機能: ログイン、ユーザー管理
• API連携: 外部サービスとの統合

差別化要素

• ビジネス価値: 実際の課題解決につながる内容
• 技術選定理由: なぜその技術を選んだかの説明
• パフォーマンス: 高速化、最適化の工夫
• テスト: 自動テストの実装

プロジェクト例

• 家計管理アプリ: 収支管理、グラフ表示、目標設定
• タスク管理ツール: チーム機能、期限管理、通知
• ECサイト: 商品管理、決済、レビューシステム
• SNS風アプリ: 投稿、フォロー、リアルタイム通信

4. 面接対策

よく聞かれる質問

• 「なぜSIerからWeb系に転職したいのですか？」
• 「SIerとWeb系の違いをどう理解していますか？」
• 「新しい技術をどのように学習していますか？」
• 「チーム開発での経験を教えてください」

効果的な回答のポイント

• 具体的な理由: 技術成長、ビジネス価値創造への関心
• 学習意欲: 継続的な技術習得への取り組み
• 成長ストーリー: SIer経験をどう活かすか
• カルチャーフィット: Web系の文化への適応力

企業選択の戦略

企業規模別特徴

メガベンチャー（楽天、サイバーエージェント等）

• メリット: 高年収、安定性、福利厚生
• 向いている人: 大規模サービス開発、安定志向
• 転職難易度: 高（競争激しい）

成長ベンチャー（100-1000名）

• メリット: 事業成長実感、技術裁量、キャリアアップ
• 向いている人: バランス重視、成長環境
• 転職難易度: 中（実力次第）

スタートアップ（〜100名）

• メリット: 大きな裁量、ストックオプション、最新技術
• 向いている人: リスク許容、技術好き、変化対応
• 転職難易度: 中（カルチャーフィット重視）

業界別特徴

EC・小売系

• 代表企業: メルカリ、ZOZO、BASE
• 技術特徴: 大規模トラフィック、決済、在庫管理
• SIer活用: 基幹システム連携、セキュリティ

フィンテック

• 代表企業: マネーフォワード、freee、ペイディ
• 技術特徴: 金融API、セキュリティ、コンプライアンス
• SIer活用: 金融知識、規制対応、システム統合

HR Tech

• 代表企業: SmartHR、ビズリーチ、LAPRAS
• 技術特徴: ワークフロー、データ分析、マッチング
• SIer活用: 企業システム理解、業務プロセス設計

転職サイト・エージェント活用法

IT特化エージェント

• レバテックキャリア: Web系転職に強い、技術理解度高
• Geekly: ゲーム・Web系専門、カジュアル面談可
• paiza転職: スキルチェック、実力証明

直接応募・カジュアル面談

• Wantedly: ベンチャー企業多数、カジュアル面談
• Green: IT企業専門、人事とダイレクト連絡
• LAPRAS SCOUT: GitHubベースのスカウト

転職タイミングと準備期間

最適な転職タイミング

市場動向

• 1-3月: 新年度採用、求人数多い
• 9-11月: 下半期採用、競合少ない
• 4-6月: 中途採用活発、即戦力需要

個人的タイミング

• プロジェクト区切り: 現職でのキリの良いタイミング
• スキル習得後: 基本的なWeb技術習得完了後
• 経験2-5年: SIerでの基礎経験 + 学習意欲のバランス

準備期間の目安

3ヶ月プラン（最低限）

• 学習: 基礎的なJavaScript、React
• ポートフォリオ: 1-2個のシンプルなアプリ
• 企業研究: 10-20社の詳細調査

6ヶ月プラン（推奨）

• 学習: フルスタック開発、モダンツール
• ポートフォリオ: 3-4個の本格的なアプリ
• 実務経験: 副業・OSS貢献等

12ヶ月プラン（確実）

• 学習: 高度な技術、アーキテクチャ理解
• ポートフォリオ: 企業レベルの品質
• ネットワーク: 勉強会参加、コミュニティ活動

失敗パターンと対策

よくある失敗パターン

準備不足

• 症状: 技術的な質問に答えられない
• 対策: 基礎固めの徹底、実践経験の積み重ね

企業研究不足

• 症状: カルチャーミスマッチ、期待値の齟齬
• 対策: 社員との面談、口コミサイト活用

転職理由の曖昧さ

• 症状: 面接で説得力のない回答
• 対策: 明確な動機、キャリアビジョンの整理

年収だけに注目

• 症状: 働き方、環境への不満
• 対策: 総合的な条件での判断

リスク軽減策

副業・業務委託での経験

• Web系での実務経験積み重ね
• 企業・業界の実態把握
• ネットワーク構築

転職エージェント複数利用

• 情報収集の多角化
• 条件交渉のサポート
• 客観的なアドバイス

段階的な転職

• SIer → Web系受託 → 自社サービス
• リスクを抑えた段階的移行

まとめ：SIerからWeb系転職は人生を変えるチャンス

SIerからWeb系への転職は、以下の特徴を持ちます。

• 高い成功可能性: 適切な準備があれば高い成功率
• 年収アップ: 20-40%の年収向上が期待可能
• 技術的成長: 最新技術での継続的な学習機会
• 働き方改善: フレックス、リモートワークの実現
• キャリアの多様性: 技術専門からマネジメントまで

SIerでの経験は決して無駄ではありません。大規模開発、品質管理、顧客対応など、Web系でも活かせるスキルは多数あります。重要なのは、これらの経験を活かしながら、Web系で求められる技術・マインドセットを身につけることです。

この記事を参考に、計画的な準備を進め、SIerからWeb系への転職を成功させてください。あなたのエンジニアキャリアが大きく飛躍することを願っています。